多古町・松崎神社(多古町東松崎)で3月8日、60年に1度の「神幸祭(じんこうさい)」が執り行われた。1606年に始まった五穀豊穣(ほうじょう)・無病息災を祈願する祭礼。前回開催は1966(昭和41)年で、実に60年ぶりの本番を迎えた。
当日午前、松崎神社で出社祭を終えた一行は匝瑳市の野手浜海岸へと場所を移し、みこしが海岸に出て潮水を浴びる「お浜降り」に臨んだ。海岸では威勢のよい太鼓やしの笛が演奏される中、法被姿の担ぎ手たちが海に入ってみこしを揺らし、集まった人たちは五穀豊穣や無病息災を願いながら60年に1度の祭りを見守った。
準備を進めてきたのは「宮本地区神幸祭保存会」と「松崎神社神幸祭実行委員会」。2021年6月の発足以来、記録がほとんど残っていない中、当時を知る数人への聞き取りや古いコピー写真を頼りに準備を重ねてきた。
実行委員長の飯田良一さんは「前回の祭りに祖父が関わっていたことを知り、縁を感じた。今日歩いている人たちが笑顔になっているのが見えた。それが一番良かった。この祭りに来てくれて、うれしい」と感慨深く話す。
担ぎ手として参加した北総神輿(みこし)連合天神会・頭の北井充さんは「60年に1度というのはめったにお目にかかれるものではない。真摯(しんし)に、きちんとやりたい。地方によって担ぎ方もかけ声も違うので、打ち合わせをして氏子の希望に沿った担ぎ方をすることが一番大切」と話す。担ぎ手、おはやしの団体も複数が合同で参加したという。
おはやし部門では、地元・西浜の子どもたちの姿も輝く。今日のためにわずか4カ月の稽古を積んだという野田小学校1年の宇井鈴奈さんは「太鼓の上に乗るのを頑張る。笑顔で頑張るという目標がある」と元気よく話した。
実行委員会の平野欽作さんは「地域の協力がなければ、この祭りはできなかった。人と人とのつながりがとてもうれしい」と広域の協力に感謝した。次世代への継承について、「つなげていくことが大事。人と人がつながって語り継ぐのも大切だし、記録として残していくことも必要。小さな集落だが、未来永劫(えいごう)続いてほしい」と願いを込めた。
前回の様子を知る人が少なく、過疎化で担い手も減る中、地元の人たちが5年前に実行委員会を立ち上げ、2日がかりだった日程を1日に短縮するなどして簡素化を図りながら準備を進めてきた。今回が8回目となる神幸祭。記録映像や書面を通じた継承の取り組みとともに、地域の絆が次の60年へと引き継がれた。